『違いも受け入れ合い、誠実に向き合うことで、関係の発展に繋がる』
現代社会では、24万人もの人が20歳以降に発達障害と診断されています。
そんな中、発達障害(ADHD)のパートナーをもつ人は、どのように暮らしているのでしょうか。
今回MOREDOORでは、発達障害を後ろ向きに捉えず、ADHDをもつ彼とさまざまな工夫の凝った生活を送るDさん(仮名)に、「日々の暮らし」をインタビュー。
交際2年目となるDさんは、発達障害やそれに伴うメンタルヘルスで悩む人に対する偏見や差別が、少しでも減少してほしいと考えています。
専門家であるカップルセラピストからのアドバイスも踏まえて、ご紹介します。
※当事者の声はさまざまです。あくまで一例として、考えるキッカケになれば幸いです。
ーーパートナーがADHDかも?と気づいたきっかけは?
Dさん:パートナーとの共同生活で気づきました。
例えば、家計管理が難しく、支出がコントロールできない瞬間や、計画を立てることが苦手な面が目立ちました。
また、コミュニケーションでは、話題が逸れやすく、集中が続かない様子も見受けられました。
こうした些細なことが積み重なり、彼がADHDかもしれないと考えるようになったのを覚えています。
生活の中での細かい変化や、普段の行動パターンに気づいたことが、キッカケでした。
ーー日常生活を送る上で、なにか悩みはありましたか?
Dさん:パートナーは自分の感情を表現することが難しく、私が期待するコミュニケーションのスタイルと違いました。
これが誤解や疎外感を生み、悩むことになりました。
ーー解決に向けて、どんな工夫をしましたか?
Dさん:まずは冷静になり、お互いの期待や感情について率直に話しました。感情表現が苦手な彼に対して、テキストや手紙を活用して気持ちを伝える方法を導入しました。
また、お互いにコミュニケーションのスタイルや重要視する点に理解を深め、妥協点を見つける努力をしました。
ーー独自の方法を編み出したんですね。何か気づいた点はありましたか?
Dさん:気づいた点は、お互いに異なるコミュニケーションスタイルがあっても、受け入れ合い、誠実に向き合うことが関係の発展に繋がるということです。
ーー素敵ですね。パートナーとは、どんな関係性を築いていきたいですか?
Dさん:信頼できて支え合える関係性がいいです。
ーー今後、社会に対して「もっとこうなったら良いのにな」と思うことはありますか?
Dさん:教育制度において、個々の生徒の学習スタイルや興味に合わせた柔軟なカリキュラムの導入をしてほしいなと思います。
そうすることで、より自分に合った進学や職業を見つけやすくなるだろうなと思うからです。
また、メンタルヘルスへの理解を深め、社会全体での精神的な健康の重要性を広く認識する仕組みが整備されると、もっとメンタルヘルスの問題に苦しむ人たちへのサポートが充実して、偏見や差別が減少するかもしれないと思っています。
カップルセラピストは2人の関係をこう見る
パートナー間の関係改善を目的としたカウンセリングを行う、“カップルセラピスト”はお二人の関係をどう見るのでしょうか?
これまでの3,000件以上に及ぶ臨床経験を活かし、パートナー間の課題解決をサポートしてきたカップルセラピストの坂﨑さんに話を聞きました。
ーーDさんのお話をどう感じましたか?
カップルセラピスト坂﨑さん:素晴らしい対応をされていると思います。
「冷静に」とさらっと言われていますが、それがカップル関係ではなかなかできない。
冷静に話し合った先に、アイデア、工夫、実行が生まれてきますが、その前段階で「どうして自分のことを理解してくれないの」「相手がおかしくて、自分が正しい」という主張をし続けてしまうからです。
実は、決してうまくいく方法がさっぱりわからないわけではなく、感情的なぶつかり合いが邪魔していることがほとんどです。
教育制度にまで言及されているのでADHDの基本的な理解も学ばれた上で、お互いのコミュニケーションパターンを理解し工夫されているのだなと想像しました。
例えば一方は「感情的交流がしたい。自分の気持ちをわかってほしい」もう一方は「現実的な解決が優先。解決すればこの衝突はなくなる」ということはカップルでよく起こることです。
この理解と工夫まで辿り着けることは当たり前ではありません。
お互いを思いやる気持ちが重要
ADHDのパートナーをもつと大変な面ばかりがクローズアップされがちですが、
実際の当事者から寄せられたのは「違いも受け入れ合い、誠実に向き合うことで、関係の発展に繋がる」といった前向きな言葉でした。
ADHDのパートナーであっても、そうでなくても、お互いが冷静に向き合う中で見えてくる解決策があるのではないでしょうか。
みなさんは、この記事を読んでどのように感じましたか?
臨床心理士・公認心理師、COBEYAセラピスト。
2010年鳴門教育大学大学院修了。
スクールカウンセラー、男性相談員、就労支援相談員、専門学校講師等を経て、2021年よりCOBEYAにカップルセラピストとして参画。
これまでの3,000件以上に及ぶ臨床経験を活かし、パートナー間の課題解決をサポート。
(MOREDOOR編集部)