長い間一緒にいて良好な関係を築けていても、子どもの思春期は避けられないものですよね。
なかには、我が子との距離感に悩んでしまったという方もいるようで……。
そこで今回MOREDOORでは、「思春期の我が子との間で起きた問題」をご紹介します。
Kさんの場合
一番上の子どもが中学生になり、だんだん口数が減っていきました。
親である私の小言にも敏感な反応を示すように……。
そんな中、下の子は小学1年生なのでまだまだママに甘えたい盛りで、うまいことママにベタベタくっついてくる一方、上の子はうまく甘えたい時に甘えられない様子。
強がるばかりで、寂しそうにも見えました。
中学生にもなり、学校のテストや友人関係のトラブルもあり、私に相談したいだろうし慰めてほしい様子もありましたが、うまく甘えられない姿がもどかしかったです。
どんな気持ちになりましたか?
我が子は皆、同じ可愛く愛おしい存在なので、中学生になった一番上の子にも、甘えてほしいし頼ってほしいと思っていました。
また、ママはママで寂しい気持ちでした。
どのように向き合いましたか……?
毎日話をして、子どもの日常について聞くように心がけました。
娘の様子をよく見て、何かあったら対処できるようにし……。
娘が反発しないような、かつやる気を出させてあげるような言葉があれば知りたかったです。
(46歳/主婦)
どうやって対話すれば?
「思春期は適切な距離を保つ」「親として少し離れて成長を見守る」ことがよいと聞きますが、思春期の子どもとどうやって向き合えばいいのか、私たちはあまり教わってきませんでしたよね。
臨床心理士はどう考えるのでしょうか?
出雲いいじまクリニック院長の飯島先生に伺いました。
臨床心理士からの言葉
こどもが思春期に差し掛かると、親子関係も急激に変化していくものですが、この時期の子どもの変化に困惑する親御さんも多いでしょう。いったいお子さんの変化をどのように理解し、どう接したらよいのでしょうか。
ところで、もともと春という漢字は「性」の暗喩として用いられるものです。つまり思春期というのは性を思う、つまり性に興味を持ちはじめる時期という意味です。というのもこの時期には男性ホルモン、女性ホルモンといった性ホルモンが人生最高濃度で分泌されるようになり、大きく心身の状態を変えていくからです。
性ホルモンは脳にも大きく影響し、脳全体を成熟させるとともに自我意識を高め、比較的従順な子どもの脳から自身の自立と独立性を重んじる大人の脳へと変化させていきます。つまり、思春期の心身の変動は心理学的なイベントであると同時に、それ以上に脳自体の「大人化」という現象と理解できます。
通常、人間関係は心理学的なやりとりをベースに変化していきますが、思春期においては脳自体という心の大元が変化しますので、親から見るとこどもの急激な変化についていけず、困惑することになります。親からすれば「いままでとなんだか違う、可愛くあどけなかったあの子はどこにいってしまったの?」という気持ちになります。
この出来事は親にとっては、大きな喪失感になるとともに、変化しつつある新たな人格を持った我が子と再度人間関係を結び直していくという、親自身の発達課題を突きつけられるということでもあります。
一方で、記事のようにまだ幼い妹や弟がいる場合、接し方の切り替えを頻繁に求められることになり、混乱に拍車がかかります。思春期のこどもはまだ成長過程であるため、親に反発する一方、甘えたいという気持ちも残っており、弟や妹に親がいままで通り愛護的に接しているのをみて、嫉妬をしてしまうこともあるでしょう。
うざいけど甘えたい、でもベタベタするのも違和感がある、世話をしてほしいけど、自分でやりたい。といった、自己矛盾する感情を抱えているのが思春期の特徴です。また、性に関する衝動をうまく発散することができず、大きなイライラを感じ続けてもいるという状態です。
親としては、自身の喪失感に向かい、少しずつ子離れを受けれ入れていく時期です。自身の喪失感を乗り越えることが難しいと、小さな子どもに対するように過干渉になったり、逆に支配的になってしまうことになります。これでは、親子関係は破綻せざるを得ないでしょう。
親は「あの子は変わった、そして今も変わりつつある」ということを受け入れて喪失感を克服し、主として「見守る(もちろん危機には手助けしますが)」だけのスタンスに緩やかに移行していくのがよいでしょう。
まとめ
中学生の我が子との関係性に悩んでいたというKさん。
幼いことろは違い、強がるばかりでうまく甘えられない姿に困惑していた様子。
思春期の子どもとの関係は、親にとっては時に難しく感じるかもしれませんが、見守る立場をとることで大切な時期を乗り越えていくことができるのかもしれませんね。
皆さんは、思春期の子どもを育てる過程で、悩んだことはありますか?
精神科医・総合診療医・漢方医・臨床心理士
診療科の垣根を超えた総合的な心身医療を行う。他院で解決できない複雑な病態、とくに不登校児の診療や不定愁訴(心身におこる様々な原因不明の症状)を得意とする。全国で初めての「不登校専門クリニック」を開設し、社会問題の解決に尽力中。
※この記事は実際に募集したエピソードを記事化しています。
(MOREDOOR編集部)