「PMSかと思ったら…」イライラや絶望感が抑えられない。知っておくべき“PMDD”とは

「PMSかと思ったら…」イライラや絶望感が抑えられない。知っておくべき“PMDD”とは

※この記事には精神疾患に関する記述が含まれます。閲覧にはご注意ください。

PMDD(月経前不快気分障害)とは何か?


生理前の心身の不調は多くの女性が経験しますが、特に深刻な症状を抱える人はPMDD(月経前不快気分障害)かもしれません。
では、PMDDとは具体的にどのような状態を指すのでしょうか?
今回はPMDDの特徴、症状、そして対処法について詳しく解説します。

PMDDの主な特徴〜PMSとの違い〜


PMDDの特徴は、月経前に強い精神症状を伴い、別人のようになってしまうことです。
とくに、「イライラや怒り」「不安や落ち込み」といった感情の変化が激しいのが特徴。
PMS(月経前症候群)と似ていますが、PMDDはその心の症状がより強く、社会生活や日常生活に大きな影響を及ぼす点で区別されます。

PMDDの主な特徴〜どんな人がなる?〜


思春期前のこどもや閉経後の女性には症状はみられません。
そして女性ホルモンにかかわる薬の投与で改善が見られることから、PMDDは女性ホルモンに関わっていると言われています。

2013年に「抑うつ症状群」の一つとなり、月経がある女性の1.8~5.8%が該当するそうです。(※1)
(※1 DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル; 日本精神神経学会日本語版用語監修, 医学書院: 171-174, 2014)

PMDDの症状と日常生活への影響


PMDDの症状は個人差がありますが、代表的なものには以下があります。

    1. 強いイライラや怒り

 

    1. 抑うつ感

 

    1. 不安感

 

    自己批判的な思考や絶望感

これらの症状は月経が始まると自然に軽快しますが、症状が出始める生理前3〜10日間、個人の生活に深刻な問題を引き起こすことがあります。
家族や職場の同僚にきつくあたってしまったり、仕事や学校に行けなくなってしまうことも。

PMDDの対処法

PMDDへの対処法は、症状の重さによって異なりますが、一般的なPMSに対する対応策と同じく生活習慣の見直しも一つの方法です。

自分の症状の把握

    1. どんな症状がいつあったか記録をつける

 

    1. 基礎体温をはかる

 

    月経に関する記録をつける

こうした記録は、専門家へ相談するときにとても役立ちます。
現在は月経管理アプリで簡単にメモすることができますので、まだつけたことがない人はぜひ試してみてください。

食生活の見直し


不安やイライラを抑え、感情の暴発を防ぐホルモンは、セロトニンです。
セロトニンは、必須アミノ酸のトリプトファンから作られます。
ですのでトリプトファンを多く含むレバーや赤身の魚、大豆製品や乳製品を意識して摂っていきましょう。

男性よりも摂取すべき栄養素

また日本人女性が不足しがちな鉄分とカルシウムも大切です。
とくに鉄分は月経のある女性は男性よりも推奨摂取量が多くなります。

月経がある女性の1日の鉄分推奨摂取量

    1. 10歳〜14歳 12.0mg

 

    15歳〜49歳 10.5mg

男性の1日の鉄分推奨摂取量

    1. 10歳〜11歳 8.5mg

 

    1. 12歳〜17歳 10.0mg

 

    18歳〜49歳 7.5mg

※厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」P366「鉄の食事摂取基準」より引用


このように鉄分は男性よりも月経のある女性の方が常に推奨摂取量が多くなります。
1食レバーを食べると、1日の鉄分の1/2を賄えるイメージです。
サプリメントなどを上手に活用しながら、3食きちんと鉄分を摂れているかどうか、ぜひ意識してみてくださいね。

PMDDの治療法


ピルや漢方、抗うつ薬などの薬物療法も適用可能で、医師とともに向き合っていくことで改善していけます。
何より重要なのは、心の変化が日常生活に影響を与えている場合は、PMSだけでなくPMDDの可能性も考慮し、早めに婦人科や精神科に相談しましょう。

正しい理解を

PMDDは、正しく理解して適切な対処をすることが大切です。
正直、「病院はいきづらいな」と思うかもしれませんが、「こんなことで相談していいのかな」と思うようなことであっても、大切なあなたの心と体の健康を守るために、必要なサポートを受けてみてくださいね。

監修医:新見正則医院院長、新見正則

1985年慶應義塾大学医学部卒業。1998年移植免疫学にて英国オックスフォード大学医学博士取得(Doctor of Philosophy)。
2002年より帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。
2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。20代は外科医、30代は免疫学者、40代は漢方医として研鑽を積む。
現在は、世界初の抗がんエビデンスを獲得した生薬フアイアの啓蒙普及のために自由診療のクリニックでがん、難病・難症の治療を行っている。
新見正則医院では世界初の抗がんエビデンスを獲得した生薬「フアイア」を使用。
最新刊『フローチャート整形外科漢方薬』はAmazonで三冠(臨床外科、整形外科、東洋医学)。
下記も好評発売中。
「しあわせの見つけ方 予測不能な時代を生きる愛しき娘に贈る書簡32通」

▶︎新見正則医院ブログ

(MOREDOOR編集部)