「分かっていても、実践は難しい?」  TinderとNPO法人mimosasが語る、“日本の同意文化”とは

「分かっていても、実践は難しい?」 TinderとNPO法人mimosasが語る、“日本の同意文化”とは

「性的同意(コンセント)」という言葉は知っていても、それを実際に人間関係の中でどう使えばいいか、正直悩んでいませんか?

先日、マッチングアプリ「Tinder」がNPO法人mimosasと共催した「出会い」に必要な同意とパートナーシップについての現状と課題を考えるトークセッションに参加してきました。このイベントは、単なるアプリの安全機能の話ではなく、私たちが日々直面するコミュニケーションや文化の壁について、深く切り込むものでした。

Tinderの親会社であるMatch Groupのトラスト&セーフティ担当シニア・バイス・プレジデントYoel Rothさんと、mimosasの疋田万理さん・みたらし加奈さん(公認心理師・臨床心理士)が語った、リアルな日本の現状と、自分を守るための具体的なヒント(考え方)をご紹介します。

1. 私たちが直面する「同意」のリアルって?

「同意は大事」、これは共通認識です。しかし、Match GroupのYoelさんが示したデータは衝撃的でした。

「Z世代の4分の3が同意は大切だと知っているが、同じくらいの人が、具体的に同意の意味をわかっていない」

知識はあるのに、実践に落とし込めていない現状が浮き彫りになりました。なぜ日本では「同意」が難しいのでしょうか。

◆空気と察し合いが生む「同調圧力」の壁


みたらしさん(公認心理師)は、日本の歴史の中で「隠すべき」と捉えられていたメンタルヘルスへの考え方そのものが、私たちの「YES/NO」の表現を難しくしていると指摘しました。

  • ハイコンテクストな会話や「空気を読む」ことが求められる文化。
  • この同調圧力が、自分の意見や「嫌な気持ちを削ぎ落とす」ことを私たちに無意識に強いる。

「つい友達や恋人の前で、言いたいことを飲み込んじゃう」経験は、私たちにも身近です。自分の「NO」を大切にせず、相手に合わせてしまう文化こそが、コミュニケーションの初期段階から、私たちの「YES/NO」の力を弱めているのです。

2. 自分を守る最強ツール:「FRIES」をマスターしよう

では、どうすれば自分にとってベストな同意を表現できるようになるのでしょうか。Yoelさんが紹介したのが、グローバルな安全教育で使われるフレームワーク「FRIES」です。

特に重要なのは「E(前向きなYES)」「R(いつでも撤回できる)」です。

  • 「消極的な『まあいいか』は同意ではない」
  • 「一度OKしたからといって、永遠に同意が続くわけではない」

この基準を知っているだけで、自分の気持ちと相手の気持ちを客観的に判断できるようになります。

◆ネガティブな経験を“報告”しない、「恥」の壁を壊す

もう一つ、私たちが学ぶべきは「報告(レポート)」の重要性です。

Yoelさんは、嫌な経験をした人が「恥ずかしい」「自分にも非があったかも」と感じ、アプリに報告しないことが、安全対策の最大の課題だと述べました。


みたらしさんが指摘した、メンタルヘルスや性の話題を「隠すべきもの」とする日本の「恥」の文化が、ここでも影響を与えているのです。

マッチングアプリ『Tinder』上で嫌な経験をした場合、レポート(報告)をすることは、あなた自身の安全だけでなく、次にアプリを使う誰かを守ることにもつながる、重要なアクションです。どうか、あなたの身を守るため、そして他の誰かのために、ためらわずに声を上げるという選択肢を選んでください。

3. 「YES」を伝えることはセクシー

日本特有の文化的な壁を乗り越え、「同意」をポジティブに捉え直すにはどうすればいいでしょうか。

◆「奥ゆかしさ」より「主体性」

疋田さんは、日本の「奥ゆかしさ(恥ずかしさ)が美」とされる文化に対し、こう提案しました。

「主体的にYESといっていくことはセクシーだよね、という文化を根付かせたい」

自分の意見をはっきりと、前向きに表現できることは、魅力的でカッコいいという新しい価値観です。「察してほしい」ではなく「伝えよう」とすることが、最高の関係を築くための第一歩です。

また、みたらしさんは「日本語の『やめて』という言葉が、海外の一部で『YES』として誤解されて流通している現状がある」と指摘し、「自分のNOを大切にする」文化を取り戻すことの重要性を強調しました。

◆同意は、日々のコミュニケーションで使うスキルでもある

この議論は、恋愛に限った話ではありません。
疋田さんが最後に語ったように、「同意は、特別な話ではなく、友達とのランチの予定を決めるときや、旅行のプランを一緒に考えるときなど、日々のコミュニケーションの中にある」ものです。

Tinderとmimosasは今後も、アプリという身近なプラットフォームを通じて、「学ばなきゃ」と構えずに、「なんとなく面白そう」から始められる、カジュアルな学びの場を提供していく予定です。

4. デートや日常に「FRIES」をどう活かす?【実践編】

「FRIES」で学んだ考え方は、恋愛に限らず日常のコミュニケーションにも応用できます。例えば、人間関係の初期段階で直面しやすい、下記のような場面で「FRIES」の視点を取り入れると、どう変わるかを見てみましょう!

シチュエーション①:距離が近づいたときの「軽いボディタッチ」をする/される時

カフェで並んで座ったときや、歩いているときなど、相手のパーソナルスペースに入る行動は、同意が必須です。

【I】 (内容を理解している) を意識する:
相手に触れる前に、「ちょっと面白くて、肩を叩いてもいい?笑」や「寒くない?(触れる前に)腕組む?」など、行動とその意図を言葉で明確に伝える。

【R】(いつでも撤回できる) を意識する:
触れた瞬間に相手が少しでも体を引いたり、会話が止まったりしたら、それは「NO」のサイン。すぐに手を離し、「ごめんね、大丈夫?」と撤回を尊重する姿勢を見せる。

シチュエーション②:デート中、相手の「写真」を撮る/撮られるとき

相手に断りなく写真を撮ったり、SNSに上げたりするのは、プライバシーの侵害につながります。

【F】 (自由意思) を意識する:
「記念に写真撮ってもいいかな?顔出しNGとか、もし嫌なら断ってね」と、相手がNOを言える権利があることを先に伝えてから誘う。

【S】 (具体的) を意識する:
「記念写真として、自分のスマホに保存するだけだよ」「ストーリーに載せても大丈夫?(載せるならぼかす?)」と、何に使うかまで具体的に確認する

シチュエーション③:会話の中で「個人情報」を深掘りする/されるとき

初対面や関係が浅い段階で、住んでいる場所や家族構成など、踏み込みすぎた個人情報を聞かれる場面です。

【R】 (いつでも撤回できる) を意識する:
「この話はちょっとしたくないな」「ごめん、それはまだ秘密なんだ」と、その話題から離脱する権利があることを認識し、言葉で明確に拒否する。

【F】 (自由意思) を意識する:
相手が何度も聞き返してきたり、教えるまで会話が進まなかったりして、もしあなたが「なんだか答えづらいな」と感じるなら、それは無理をしてまで答える必要がないサインかもしれません。 そんな時は、話題を変えたり「もう少し仲良くなってから話すね」と伝えたりする選択肢も持っておけると安心です。

自分事として「同意(コンセント)」を捉えてみよう

今回のイベントに参加して、「同意(コンセント)」とは、誰かを縛るルールでも、堅苦しい義務でもなく、自分と相手を尊重し、人間関係をより安全で、より楽しくするための「コミュニケーションスキル」なのだと強く感じました。

「自分のYES/NOを自分の言葉で決めて伝える」ことは、最初は勇気がいるかもしれません。

私たちも「場の雰囲気を壊してしまったらどうしよう」「ある程度我慢することも必要だよね…」といった不安を感じるのは自然なことです。特に日本社会では、そうした感覚を抱きがちです。
ですが、あなたが本当に大切にしたい関係性を築くために、「自分の気持ちを伝える」という選択肢があることも忘れないでください。

もし今、人間関係で悩んでいるなら、「空気を読むこと」だけに頼るのではなく、「自分の心を読み、それを伝える」という、もう一つのコミュニケーションの手段を試してみませんか?

今日学んだ「FRIES」は、自分の心の声を確認するための羅針盤になります。あなたの心の声が、より健全で楽しい人間関係を築くための、新たな一歩になるはずです。